未成年者が相続放棄する方法は?

人が亡くなったときに借金などの負債が残されていたら、相続人は相続放棄をすることによって負債の支払いを免れることができます。
ただ、相続人が未成年者の場合には、未成年者は自分で有効な相続放棄をすることができません。この場合、法定代理人が相続放棄の申述を行う必要がありますが、このとき、誰が未成年者の代理人になるのかが問題になるケースがあります。

そこで今回は、未成年者が相続放棄をする方法について、解説します。

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未成年者は単独で有効な法律行為ができない

未成年者が相続人になっているケースでは、未成年者は自分で相続放棄の申述をおこなうことができるのでしょうか?
民法上、未成年者は、単独で有効な法律行為を行うことができません(民法5条1項)。これは、未成年者は判断能力が未熟であるため、適切に判断を行うことができないので、単独での判断を認めると未成年者自身に不利益が及ぶと考えられているためです。

そこで、未成年者は、法律行為を行うため、法定代理人による同意が必要です。
相続放棄を行う場合も同様で、未成年者が単独の判断で手続きを行うことができず、法定代理人によって行われる必要があります。

未成年者の法定代理人

未成年者が相続放棄をするためには法定代理人が手続きしなければなりませんが、このとき、誰が法定代理人になるのかが問題です。

未成年者の法定代理人は、一般的には未成年者の親権者です。両親が婚姻している場合には両親ともに親権があるので、父母のどちらでも未成年者を代理して相続放棄の手続きをすることができます。父母が離婚をしていて、どちらか一方の単独親権となっている場合には、その親権者が未成年者を代理して相続放棄することになります。

両親がおらず、未成年後見人がついているケースなどでは、その未成年後見人が法定代理人となるので、未成年者のために相続放棄の手続きをします。

親権者と未成年者が利害対立するケース

未成年者が相続放棄するためには法定代理人が代理で行う必要がありますが、とくに親権者が法定代理人になる場合、親権者と未成年者の利害が対立するケースがあります。

たとえば、被相続人が父親で、母親と子どもが相続人になっているケースを考えてみましょう。このとき、母親は未成年者の法定代理人となりますが、未成年者が相続しなければ母親の相続分が増えるので、母親と未成年の利害が対立します。

このようなケースに母親に未成年者の相続放棄をさせるのは不都合があるので、未成年者と親権者の利害が対立する場合、家庭裁判所に申立をして、特別代理人を選任してもらう必要があります。そして、特別代理人が未成年者を代理して相続放棄を行います。

ただ、親権者と未成年者の利害関係は、常に対立するわけではありません。
未成年者と親権者が双方とも相続人になっていても、親権者も未成年者も両方が相続放棄をする場合には、利害対立はありません。
先に親権者が相続放棄をしており、その後未成年者が相続放棄を行う場合にも、やはり利害対立はないと考えられます。こうした場合には、特別代理人を選任する必要はありません。

これに対し、親権者と未成年者が両方とも相続人になっていて、かつ親権者は相続放棄せず未成年者のみが相続放棄するケースでは、利害対立があるので特別代理人の選任が必要になります。

熟慮期間の起算点について

相続放棄をする場合には、自分のために相続があったことを知ってから3ヶ月以内の熟慮期間内に行う必要があります。
ただ、未成年者が相続放棄を行う場合、未成年者自身は手続きすることができないので、未成年者が「自分のために相続があったことを知った」かどうかを基準にすると、不都合があります。そこで、民法は未成年者についての熟慮期間の特則を定めています。

具体的には、未成年者の場合、相続放棄をすべき法定代理人が、未成年者のために相続があったことを知ってから3ヶ月間が熟慮期間とされます。

たとえば、未成年後見人がついている場合には、その未成年後見人が被相続人の死亡と未成年者が相続人になっている事実、さらには被相続人に借金があったことを知った時点から3ヶ月の熟慮期間が開始することになります。

以上のように、未成年者と相続放棄については、難しい問題がありますので、正しく理解しておきましょう。

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